看護師として病院で働いていると、さまざまなシチュエーションのなかで「働く場所」「働き方」について考えたり悩むことがありますね。
人間関係、勤務状況の不満やストレスを感じて考える場合もありますが、「結婚・出産・育児」のタイミングで、自分の希望するライフスタイルをベースに考えることがよくあります。
せっかく得た資格と経験、病院だけではなく自分のニーズに合わせて働けるところはどんなところがあるのか、いくつか現状と照らし合わせながら紹介していきたいと思います。
目次
「介護業界全般」に、看護師資格で働ける職場がたくさんある
診療報酬の改定等により、患者さんが長く入院生活を送ることが難しくなりました。
家に帰っても介護のために必要な場所が確保できない、介護にあたる人がいないとなると施設入所を考えなければなりません。
介護する人がいても家族だけでは限界があるので、多くの方は「※介護保険サービス」を利用されます。
(※詳細:厚生労働省HP:介護保険制度の概要「介護保険とは」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html )
このように介護業界は在宅系・施設系と「介護保険サービスに位置づけられる仕事」がたくさんあり、看護師はなくてはならない存在となっています。
介護の必要な方の多くは何らかの病気を抱えているため、現状をしっかりとモニタリングするという場面でも看護師の力を発揮でき、同時に期待されます。
実際に介護保険制度のサービスの多くは看護師の配置を基本としています。
(2016年現在は看護師不足によって、一部配置基準の緩和が条件付きでなされています)
また、看護師の配置によりケア内容によっては報酬加算となるため、このような背景から看護師の選択できる職種は多くあるのです。
実際どんな職種を看護師が選択している(または、しやすい)か、まず介護業界で代表的なものをあげていきます。
訪問看護ステーション
通院が困難な身体状況の患者さんに対して、自宅へ出向きケアにあたります。
「医師の指示により、医療行為を行う」というところは、病院看護師としての仕事に通じます。
ですが今までと‘勝手が違う’部分があります。
訪問看護 | 病院 | |
勤務形態 | 車移動で、患者さんの自宅へ行く ケアは患者ごとに違うため時間はそれぞれ異なる 一日に何軒か‘はしご’あり | 病院内に限定 一勤務当たりの時間は長い 一般的に、移動になるまで配属された科で固定 |
仕事内容 | 〇セルフケア全般 〇バイタルチェック 〇医療処置・管理(以下代表的なもの) ・褥瘡処置 ・点滴、IVH ・気管切開・人工呼吸器・酸素療法 ・排便ケア(浣腸・摘便・ストーマ) ・膀胱留置カテーテル管理(カテーテル交換・膀洗) ・胃瘻・腸瘻、経管栄養 ・医療処置の家族指導・相談 ・ターミナルケア | 「配属の科に関連」した医療処置、指導・相談 |
対象 | 患者・家族 | 一般的には患者がメイン(家族もフォロー) |
仕事内容をご覧いただくとお分かりですが、訪問看護ステーションで働くためには、一通りの看護技術と知識、あと支援は家族に及びますので、コミュニケーション能力も仕事に大きく影響します。
ですので、
・看護師経験の浅い人、または、経験があっても限定した科の看護経験しかない人
・移動が必須の職種であるため、運転ができない方、苦手な方
にはお勧めできません。
・できるだけ看護師の技術・知識を生かして仕事をしたい
・看護経験が「広く浅く」でも長く、多くの科の経験がある
・指導や相談援助業務が得意・好き
上記該当が多い方ほど向いている業種といえます。
ですが訪問看護ステーション勤務は、事業所の人員体制等によって24時間対応、オンコール対応など、夜間や不規則な対応も業務となりますので、ご自身の生活環境と照らして検討ください。
デイサービス(通所介護)
介護保険サービスを利用される方を「日帰り」でお預かりする介護施設となります。
送り迎え付きで、リハビリを意識したレクリエーション等をして過ごしながら、食事や入浴のサービスも受けることができるところです。
【デイサービスのおもな業務】
仕事 | 内容or補足 | 基本は看護師が行っている・・・・◎ 介護職員が行うケースが多い・・・〇 資格に関係なく行う・・・・・・・● |
バイタルチェック | 検温・血圧・脈拍 | ◎ |
入浴支援 | 入浴は介護スタッフか専用スタッフが行い、看護師はフロアの患者対応を行うケースが多い。 | 〇 |
よくある医療処置・対応 | ・創傷処置(薬塗布、ガーゼ交換など) ・薬(服薬に関する全般) ・嚥下困難・麻痺有りの方の食事介助、見守り | ◎ ◎ ◎ (上記は〇も対応ケースあり) |
食事支援 | 利用者の移動、身の回りの準備、配膳、見守り | ● |
レクリエーション | 軽体操、ゲーム、制作活動、出し物・イベント企画 | 〇(or ●) |
デイサービスの仕事は、「看護師が必ず行わないといけない業務」は厳密にはありません。
デイサービスでよく見られる医療処置は看護師が基本は対応としながらも、基礎的な知識をマスターされている介護職員さんでもいざとなれば対応できるレベルの内容が多いので、実際の職場では臨機応変に行っています。
・ブランクがあり、病院勤務に不安のある方
・レクリエーション要素の業務もあるため、協調性があり、制作活動や楽しいことが好きな方
・日勤帯での仕事を希望される方
(※パートであれば勤務時間・曜日希望に沿っていただける傾向にありますが、土日営業は事業所によります)
上記に該当される方にお勧めできます。
ですが、外科系急性期、救急外来などで緊急の状況や時間に追われる仕事に従事されていた看護師の中には、このデイサービスの‘まったり’とした雰囲気と介護職カラーの強さに「物足りなさ」「違和感」を覚え、『合わない』と感じる方も正直みえます。
前職の背景や、もともとの性格・特技の有り無し、得意不得意も多少影響を受ける職場かもしれません。
訪問介護
これも看護師資格で働ける仕事の一つですが、文字のごとく、利用者のお宅を訪問して介護を行います。
ですが実際には介護といっても、掃除洗濯などの主婦業と通じる仕事内容も多く含まれます。
訪問介護は3つの仕事から成っています。(下表:内容は主なもの)
生活援助 | 身体介護 | 通院等乗降介助 |
掃除、洗濯、調理、買い物代行、薬の受け取りなど家事支援全般、日常生活の身の回りのサポートを行う。 | 入浴介助、清拭、寝たきりの方への 体位変換、おむつ交換、食事介助、口腔ケア、服薬介助等、身体に触れて行うケア全般。 | バス通院の際のバス停までのサポート、介護車両への乗り降りの介助 |
他の介護系有資格者同様に、基本は看護師も身体介護に限らずどの業務にもあたることとなります。
看護師資格を有しているということで、身体介護を伴う利用者を担当されるケースは多いと思います。
訪問介護で対応できる身体介護の内容は、看護師経験のある方にとっては基本的に十分対応できる内容です。
・子育て中で長時間は働けないが、短時間で決まった曜日でのみ働きたい
・掃除が好き、料理作りが得意な方(家事支援が苦にならず、また力を発揮できる)
このような方には向いていると思います。
一回当たりのケア時間は利用者ごとに違います。
利用者の希望時間に変更があれば、また所属するシフト体制によっては、毎月まとまった同じ金額を得られないリスクもありますので、逆に固定的な給料を望む方にはお勧めできません。。。
特別養護老人ホーム・老人保健施設・有料老人ホーム・グループホーム
よく耳にするこれらの施設でも看護師の働く場としてあげられます。
「施設生活」が拠点となりますので、看護師の仕事は『入所(居)されている方の「健康管理」に関するすべての対応』です。
現状では比較的重度の方が多い①特別養護老人ホーム、
本来は病院と在宅の橋渡し的なリハビリ重視といわれている②老人保健施設も、
実際は①に準じる利用者のADLレベルの方が多く生活されています。
ですので、看護師の医療的な対応や終末期ケアも仕事となります。
比較的自立度が高い③有料老人ホームや④グループホームですが、介護度も認知度にも受け入れ対象が施設によって差がある現状もありますので、施設(入居者の状態)、看護師の役割を事前に確認しておくとよいでしょう。
④については、365日体制であることもあり、夜勤や勤務形態を確認しておくことも大切となります。
これらの施設は基本的に
・看護師と介護職の役割が分担化されていること。
・忙しさはあるが、病院勤務よりも医療処置を行う対象者が少ない。
点は利点にあげられると思いますが、健康に関する対処や、緊急時の対応に看護師に頼られる環境である点はプレッシャーに感じるかもしれません。
介護業界以外にも、看護師資格を生かせる職種がある
人間ドック、健診センター、健康管理センター など、健診事業を行う機関
企業の健康診断(以下健診)が法令で義務付けられているので、施設を拠点に展開される健診業務と、検診車で移動して行われる健診業務も、看護師資格が生かされ求められる仕事です。
大病院であれば病院内に併設されていることもありますが、上記のように専門機関としてあります。
実際の仕事は、採血、血圧測定など必要項目を、職員が業務分担して行うスタイルとなっています。
相違点 | 健診勤務 | 病院勤務 |
業務 | 担当する業務は日によって変わるが、勤務日は基本的に同じ業務を担当する。 (今日は血圧担当であれば血圧という風に) | いくつかの業務を複数行う。 |
仕事 | 決められた時間に予定されている受診人数に対して、与えられた業務をルーチン的に行うため、身体は楽。(病院勤務より肉体労働でない) 残業はほとんどなし。 日勤のみ、夜勤はない。 | 患者さんの状態によってはイレギュラーな事態が発生しやすく、肉体労働が基本。 残業は日常茶飯事。 病棟勤務は夜勤がある。 |
利点 | 身体の負担がないため、結婚・出産・子育てナースには活用しやすい。 | さまざまな看護技術を磨ける。 安定した給料。 |
健診勤務を希望される場合に有利なのは「採血が得意」であること、「心電図の測定も可能」な方です。
あと、集団検診で一度に多くの方をスムーズに受診に導かないといけませんので、手技を正確に、テキパキと行える対応ができる方が向いています。
この仕事の特徴やメリットは上記ですが、マイナス面としては企業等の健診の場合、依頼時期が季節に偏りがあるため、パート勤務では仕事量にムラがあるので(繁忙期と閑散期の差が激しい)毎月安定した給与が得られない、といった問題もあります。
ですが、基本は本人の希望に沿ってシフトを組んでもらえますので、自分のライフスタイルを優先した形で、残業でその後のシワ寄せも少ないことがお勧めできる点です。
看護師として病院勤務からブランクがある方も選びやすいということもあります。
(健診会社によっては、採血業務ができる方を条件にしているところと、「採血はやれないので、、、」と相談し受けてもらえるところとあるようです。
採血が得意な方は、「採血をメインに」仕事を受けることもできるようです。募集に記載がなければ相談されてください)
保育園・託児施設
市町村の保育園の職員募集、民間の託児所で、『保育士資格または「看護師資格」を持っている方』という表記をよく見かけると思いますが、保育業界でも看護師資格をもっている方は欲しい人材となっています。
特にNICUや小児科・産科勤務経験者や、自身も子育て経験のある方は先方にも安心されます。
最近では「病中病後保育」のニーズがあることからも、看護師はフレキシブルに医療の視点で対応できるので、よりニーズも高まっています。
マイナス面は、病院勤務と比べるとお給料の安い点、看護師の役割として子供の健康チェックや管理がメインであるとはいえ、子どもの身の回りのお世話や遊びも保育士さんと同様にやらないといけません。
ですので、病院とはまたテイストの違う体力が必要となります。
家から近い昼間の時間勤務であれば無理なく勤務できますし、子どもと関わるのが苦にならない方には向いています。
広告や市町村の広報など身近なところで募集のアナウンスがされていますので、気になる方はチェックされてみるとよいでしょう。
養護学校
養護学校でも看護師経験が生きる職場の一つです。
対象児のバイタル管理やチェック、学校の先生ではできない、吸引や経管栄養の管理、経管での水分補給、緊急時の対処が主な業務です。
もちろん、現場の先生と一緒に校外学習や修学旅行にも付き添います。
医療的なケアが必要な子ども達は看護師がいないと実質登校できませんので、現場職員のサポートや安心にも繋がっています。実例としては、勤務時はメインで肢体の不自由な児童を担当することもあります。
職場に看護師は複数おり、養護の先生も総括的な立場で在席しているので、スタッフで協力しながら業務を行います。
救急やさまざまな対応を経験している、ベテランで子育て経験のある看護師の方にお勧めです。
基本は「カレンダー通り」の勤務となるので土日祝日、あと夏休みなど長期休みもあります。
ですので、子育て世代の看護師であれば夜勤もないので、自分の子どもと生活時間を合わせることができるメリットがあります。
ただし、パート勤務は時間給扱いとなるため、夏休み、冬休みは休みがたくさんある分、その月はお給料が激減すること
となりますが、、、
介護保険制度のキーワードは「看護師資格」
介護認定調査員
介護認定を受けるためには「介護認定調査員」の訪問調査を受けることになっています。
介護認定調査員は誰でも行えるものではありません。
多くは、看護師、保健師、※ケアマネ、社会福祉士の資格を持っている方で、事前に研修を受けないといけません。
(自治体によってその他の福祉系資格も該当する場合もあります)
実は市町村が雇用の窓口になっている場合も多く、市町村のホームページや広報にときどき募集されています。
介護認定の調査項目には医療的な視点の項目も含まれていますので、項目を理解し質問者に的確に答えていただくように上手に問診していかなくてはなりません。
看護師業務の中には「アナムネ」もありますので、看護師は問診対応の基本はすでに心得ています。
調査のやり取りは日々の業務に通じるものがあり慣れているので、介護認定調査の仕事は看護師経験のある方なら基本的にこなしていけるでしょう。
ですが、この仕事は介護認定を希望される方の自宅へ伺う必要があるので、ここでも車の運転は必須です。
また、調査項目の事務作業も行わないといけませんので、
・事務的な作業が苦手な方
・調査項目に該当しない状況は「特記事項」として文章にしなければならないため、まとめるのが苦手な方
には少しネックかもしれません。
訪問件数、勤務時間は、ある程度希望に則って動けるようですので、自分のライフスタイルに合わせて働けるメリットはあると思います。
興味がある方は市町村の介護保険関係の窓口に問い合わせてみてください。
※ちまたでは、『ケアマネ』で定着・・・介護支援専門員:ケアマネジャー~補足~
看護師資格を持っている方は、病院などで(介護系事業所勤務との合算可)5年以上の実務経験のある方は、ケアマネの受験資格を得ます。
合格して既定の研修をクリアすればケアマネになれ、居宅介護支援事業所等に勤務することができます。
ですが―正直なところ、、、
介護職からケアマネになれば給料は増えますが、看護師の場合病院勤務からの移行は給与面でメリットがないこと、
現在は「5年更新制」となったので仕事を継続するためには更新研修を多くは実費で受けないといけないことなど、
看護師資格をベースに取得できますが、、、この資格に関してお勧め度は低いです。
(詳細:厚生労働省HP・介護支援専門員(ケアマネジャー)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000114687.pdf 参照)
独身アクティブ看護師、引退ベテランナース向き? アテンダントナース(添乗看護師)
広告等のちまたの求人ではほとんど見かけませんが、登録制のアテンダントナースとしてネットで仕事を斡旋しているところがあります。
・企業や個人などの旅行、研修、修学旅行、スポーツ・塾の合宿
・あらかじめ持病を抱えていたり、ハンディキャップのある方のサポート目的
このようなケースに添乗します。
仕事の内容は、参加者の体調不良、緊急対応、また状況を把握しながら救急対応の判断や搬送の付添い、となります。
国内のみならず海外のケースもありますし、拘束される日数は短期もあれば長期もあります。
「万が一の対応要員であれば」‘何もなければ’業務は発生しませんが、常に参加者の様子を気にかけなくてはなりません。もちろん対処の判断も自分一人に委ねられますので責任もあります。
このような不安を伴う仕事でもあるので、看護師のキャリアに応じた、また添乗経験に応じても研修体制が必ずあります。
勤務が心身スムーズに行えるシステムとなっています。
子育て真っ只中でない「自分の時間に融通が利く」看護師向きの仕事です。
プレッシャーはありますが、いろんな場所へ行きながら看護師としての経験や「判断能力」を鍛えていける仕事としては「合う人には合う」仕事ではないでしょうか。
まとめ
病院だけではなく、社会には看護師資格や経験で働ける仕事が多くありますね。
あと補足ですが、1)治験コーディネーター(CRC)、2)医薬情報担当者(MR)という職種も、医療現場に通じ患者や医師とのコミュニケーションに慣れている‘看護師は適職’と言われています。
(実際には仕事内容は「看護の仕事とは別物」になるので、大変な仕事のようです)
※業務内容については、下記サイト参照
1)http://jasmo.org/ja/recruit/job/index.html 2)http://www.topmr.com/mr/index.html
ご自身が‘病院看護師’を辞めて他の職種を検討するとき、もっとも重視するものは何でしょうか?
「お給料が安くても、日々の勤務時間が短くても、残業・夜勤がないところ」
「ブランクがあるので、医療処置がない仕事を優先したい」
「子育てを優先したいので、休みが多くとれるところ」
新たな仕事に求める自分の優先するべきことをしっかり確認して、それに見合う仕事を選択する「判断力」が必要となります。
これからどんな職種についても看護師の学びを生かしながら働いていけるといいですね。^^



